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リンダ リンダ リンダ が面白かった

 
2012-01-14 11:46 Good(1) Comments(0)
in Movies - 映画

『リンダ リンダ リンダ』という映画を観た。

2005年公開の映画だから、ちょうど僕がブラジルに居た頃のもの。日本ではこんな面白い映画をやっていたんだ。

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これは和製映画で、女子高生4人がバンドを組んで文化祭で演奏する、という内容。観るまでは全く期待していなかった。なぜなら、日本人が作る映像作品って大抵は『仕掛け重視』、『躍動感無し』、『間延びしまくり』、『何でもかんでもお涙頂戴に持って行く』が標準セットでついてくるから。

タイトルがリンダリンダリンダってなってるから、ブルーハーツのリンダリンダに関係した作品なんだろうなーぐらいに思いつつ再生。

ヴィオロン片手に曲のアレンジをしながら消化試合的に観てたんだけど、変にいじくりまわした映像でもなく、くどいクローズアップもなく、日常の時間通りに進んでいく感じに好感がもてて、アレンジの手を止め、ヴィオロンを置き、だんだんと真面目に観るようになった。


作品中では高校の様子がたくさん出てきて、その映像や音などを全部ひっくるめてかもし出されている質感が、身近に感じられるリアリティがあって、自分が高校生だったころの匂いを一気に思い出させる。

まるで友人が写真片手に『ちょっと聞いてくれよ。最近こんな事あってさー・・・』っていう話をしてくるのを聞いているような感じ。

いろんな面から、最近の映画に欠けてる『現実をイメージさせる』っていう事ができている作品で、こういうのはとても好き。

その一つに、『映像をCGや機材で綺麗にすること』は今のところリアリティや迫力を感じさせることに繋がってなくて、むしろ逆行しているということがあって、映像は汚いけど、ホコリっぽさや質感がある方が、足りない部分やデフォルメされた部分から現実をイメージさせるから、それによってリアリティや迫力といったものを感じる。

CGモリモリ使って綺麗な映像の『トランスフォーマー』よりも、張りぼてカクカク動かした荒っぽい映像の『シンドバット黄金の航海』の方が迫力があって手に汗握る。

最近の映画もアニメもゲームも、『リアルな映像』とは全く思えなくて、『綺麗な映像』と感心して見ている。

こういった技術的に特にいじくり回していないところや、作品中に出てくるいくつかのサブストーリーも割とほったらかしで終わってしまうところなどが、物語の主題を明確にさせていて良かった。

何かに一所懸命な時って、それ以外のことはとてもほったらかしになってしまったり、ライトだったりドライな感じになりがちな現実を、ほったらかしなサブストーリーが点在している作りから感じられて、それが現実味があり共感を持てて楽しかった。

また、高校生になると、『その道で規格外の人間』ってのが登場するところも現実的で面白かった。

この映画に出てくる歌が上手な生徒や、おっさん臭い趣味をもった生徒も、各地からいろんな人間が集まってくる『高校』になると、何気に居る存在。僕のまわりだと、高校生で既にギターの先生やってる奴とか、時代的に全く違う渋すぎる横浜銀蝿の話をしてる奴とか居て、それだけでワクワクして楽しかった。分かりやすいところで言えば、高校野球で、高校時代の清原選手、桑田選手、松井選手(ゴジラ)、田中選手(マー君)といったような、その世代でずば抜けた成長をしている人がいる状況。そういう登場人物がサラッと出てくるところも、『高校ならではの楽しさ』という現実味を感じさせる一つの要因になっている。


何といっても『お涙頂戴』な演出がされていなく、かといっておちゃらけた演出にいってしまうでもなく、今やりたい事をシンプルに一所懸命やって楽しい&気持ちいいっていう演出が一番好印象だった。

多くの日本人の感性だと、『努力=涙ぐましい』になってしまうから、どんな演出でも必ず最後はドラマチックなBGMと共に『お涙頂戴』になってしまい、僕はそれを大抵はつまらなく感じる。『努力=楽しい、ハッピー』や『努力=明るい、純粋な熱気』などという価値感もあって、僕はそっちの方が好き。この映画はそっち系なのが良い。

映画の材料にブルーハーツを選んだのも、丁度良い。彼らの歌は、基本的にナヨナヨしているメロディを作る日本人のその要素は比較的少なく、苦しんで頑張って出すハイトーンな歌い方もせず、あれもこれも詰め込み過ぎないシンプルな歌詞で、歌詞とメロディの呼吸感がマッチしていて素直な気持ちと勢いが現れている。この映画にぴったりだ。


僕が一番印象に残ったシーンは、仲たがいしている二人の会話で、『やって意味あんの?』に対して『別に意味なんかないよ』と答えるところ。

『意味あんの?』は、練習不足な新しい曲に変更する事に意味あるのか?という以外に、予定していた曲を止めて、わだかまりを残したままの他の曲を一緒にやって意味あんのか?と言っているようにもとれるけど、でもたぶんどれも言い訳で、ボーカルだった子は、仲直りする印として、以前の曲をもう一回ちゃんとやろうよ、という気持ちだったけど、もう片方につっぱねられちゃったから、体裁悪さに『意味あんの?』という言葉が出たシーンにとれた。それに対しての返答がこれ。

『別に意味なんかないよ』

気付いているけど素直になれなかったかなーという感じのシーン。ただこれがとても印象深いシーンになった。

『やりたいからやっている』、『好きだからやっている』、『意味なんか無いよ』でOKなのに、知恵が付いてくるといろんな意味や理論で武装して格好をつけたがる人が増えるし、そうでないものを評価しないという風潮は日本には多くある。

例えば僕の場合、僕の音楽活動について『何のためにやってるんですか?』とか『こうじゃなきゃダメだ』とか『人生を反映させなきゃ音楽じゃないんだよ』みたいなコムズカシーーーーイ神がかった事を言ってくる人には、『シンプルに楽しんでください』と言っている。

例えば、『俺の人生感じさせてやるぜー!』なんて考えながら演奏してる人のライブに行きたいと思う?(笑)僕は思わない。だってそのライブに集中してないってことだから。雑念交じりでやってんじゃねーよ!って思う。それより、その時間、その空間、そこでやるべきことに集中してる人の演奏の方がよっぽどいい。それを見て人生を感じるもよし、一時の娯楽を感じるもよし、何を感じても全て正しい。

物事の意味ってのは、人によって目的によって状況によって変わるもの。意味あったり、意味なかったり、変わるもの。『意味あんの?』と相手に尋ねる行為は愚行。意味、理由、建前、根拠、目的・・・、いろいろ要らない。今やりたいと感じたことを今一所懸命やる。これだけ。作品中のこのちょっとした会話は、とても良かったし、この映画全体を通しても、それがしっかり伝わる作りになっている。


また、くどいクローズアップでリアルタイム感を損ねる表現もなくて良かった。日本映画にありがちなのは、一分一秒を争うという状況にも関わらず、その場に居る人たちの決意を誇張するかのように一人一人の顔を順番に抜きで映していったり、何度もスローモーションで繰り返し流したりといったことをするけど、概ね、尺を稼いでいるだけで、そのせいで逆に内容の薄さが目立ってしまいクオリティが下がっているという結果になっている。

完全にリアルタイム感を損ねてしまっていて、僕はよくこういうことで気持ちが離れる。ダイジェストを見てるみたいな気持ちになってしまう。こういう表現がちらほらと出てくることで、その作品に間延びしていることを感じる。

『24』みたいに目まぐるしく変化がある映画じゃないけど、無理なくリアルタイムに進んでいく感じがとても良い。


小細工なしで淡々と進んでいくリンダリンダリンダという映画は、シンプルに面白かったと思える作品だった。特にブルーハーツ世代の人なら、酒を飲みながら友人や家族と見たら一層楽しいかもしれない。


リンダ リンダ リンダ の公式サイトはこちら。



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