以前、中学校で柔道や剣道などの武道が必修化されるっていうのを人づてに聞いていた。その時思ったのは、『教える人は足りるの？』ということ。

それ以上深くも考えていなかったので、すっかり忘れていたんだけど、今朝、NHKのニュースで2012年度から中学校で武道が必修化されるという問題をとりあげていて、それを見て思い出した。

NHKのこのニュースの中で、一つびっくりする事が放送されていた。

体育の先生が教えるということ。

僕はてっきり柔道選手、柔道家なんて呼ばれるその道の専門家が、特別講師みたいにやってきて教えるのだと思っていた。だから初めて必修化の話を聞いた時に『教える柔道家は足りるの？』という疑問が浮かんだ。まさか、柔道素人の普通の体育の先生が教えるなんて夢にも思わなかった。

こんな危ないことはない！

オリンピックの出場枠を競えるようなトップクラスの実力の人や、昔そうだったという人が直接指導するなら、僕は柔道を授業の一環として行うのも面白いと思うけど、普通の体育教師が教えるんだったらやめるべきだ。

僕は高校の頃に三年間授業で柔道を習っていた経験から、素人の先生が研修を受けた程度で、大勢の生徒を相手に安全に教えられるものなのか疑問に感じる。

僕の授業の先生はとても優秀な柔道経験者だったから、人体の急所、どこをどの程度やったら人体に異常をきたすのか、とっさの時にそういった危険から自分の体を守る術を、柔道を通して安全に教えていた。

授業の殆どは礼節から始まり受身ばっかり。それでも、実績もあり生徒に媚び諂うことはなく生徒一人一人とちゃんと向き合っていた先生だったから、みんな尊敬の念をもって先生と接していて、受身ばっかりだろうがグチる奴はいなかったし、むしろその先生の言う事だからマジで重要で意味があると思って真剣に取り組んでいた。『高速道路で大型バイクで転倒しても革ジャンにキズが付く程度で体は無傷で生還できるから受身はしっかりやれ』と実体験から言われれば、説得力ありすぎて受身をマスターしたくもなった(笑)。

防御、回避、防御崩し、投げ、絞め、固めなど一通り習った。そんな中でも受身の練習は欠かさず続けた。とっさに受身の態勢をとれるように、体に叩き込ませるということだ。

また、僕の先生は生徒の体の成長具合や修練度から判断して、『この技はこういう掛け方はＯＫだけど、こうはダメ』とか『ここまで持っていったら、こういう危険があるからダメ』とか、『ここまで絞めたら人間が落ちる』などと、事細かに教えていたから、怪我をする生徒はいなかった。普通の体育の授業で骨折する奴はいたけど(笑)。

このぐらい柔道を習った上で、あらためてプロの試合を見てみると、全然違うということに気付く。

何が違うって、プロの試合を見ていると、普通なら大怪我するような大勢が当たり前のように出てくるところ。でもいちいち大怪我しないのは、両者とも肉体を鍛え上げている上、危ないラインを熟知して基本形を崩しているから。

僕が反対に思う理由はここにある。

教える方も教わる方も素人という状況で、乱取りとまではいかなくても技の一つを練習するだけでも、こういった事までその場でしっかり見極めて制止できるとは思えない。『とりあえず持ち帰って検討します』なんてことは出来ない事だ。

柔道は体を使う競技。痛みを頭じゃなく体で嫌というほど知っている経験者でないと、危険を感覚的に感じてとっさに判断して制止して伝えることはできない。

『テレビで柔道の試合でやっていたのを見て、生徒にやらせても安全だと思った』なんて言い出す頭でっかちな教員が出てきそうで怖い。

指導するのが柔道の素人である体育の先生や一般教員だったら、この武道の必修化は絶対に止めた方がいい。指導者をしっかり揃えられるのならやってもいい。

やってもいいけど、、、専門的な武道って絶対に必要かなぁ？これでなきゃダメだし絶対に必要という理由が思い浮かばない・・・。

日本の伝統や精神性を学ぶことに時間を割くことも大事だけど、それよりも、食料として生き物の命を奪って生きている現実や、コミュニケーションのとり方といったような、日本人に著しく欠けている社会生活に必要な根本的なところを体験して理解して身につけられる時間にした方がいい。『そんな事よりも、まず武道！』なんだろうか？

日本は少子化少子化と叫んでいるのに、どんどん子供を育てにくい環境にしていってる。残念だ。

余談だけど、中学ではちょっと心配かもしれないけど、高校では授業以外で覚えた技を使って、他人に危害を加える奴はいなかった。流石に高校ではイジメもなかったし。せいぜい縦四方固や上四方固をふざけて艶やかにやる奴がいるぐらいだった(笑)。ちなみに男子校だ(笑えない)。

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