人の呼び方というのは、ニックネームのことじゃなくて、相手を自分の方に振り向かせるやり方のこと。ちょっと離れた所に居る人を呼ぶ時とか、レストランやバーで店員を呼ぶ時とか、そういう時に使う手段。

日本だと、っていうか、大抵は『声』を使って『ねえ、ねえ』とか『ちょっと』とか『すいません』とか声を掛けるわけだけど、ブラジルにはこれ以外にも面白い呼び方がある。

プスィィィィゥ！！

っていう呼び方。

文字だけじゃ伝わり難いから、まずは音を聴いて欲しい。

という感じの音。閉じた口を細く吐く高圧の息で開けて生じさせる破裂音と、歯と舌の間を息が通る摩擦音の組み合わせ。

この音を使って近くに居る人を呼ぶというのが、ブラジルでは時々用いられる手段。これを初めて知った時は、『そんなんで人が振り向くの？』と思ったけど、実際にやってみると、人を振り向かせるのにびっくりするほど効果がある。

例えば、沢山の人の話し声があるレストランで、ウェイターを振り向かせたい時、普通なら声を出して声を掛けるけど、こういう状況では他の人の声に混じってウェイターに届かない場合が多い。

そこでこの『プスィィィィゥ！』

サッと振り向くよ。周囲の雑音をかいくぐって、ウソみたいに相手に届いてる。

こういった賑やかな屋内のレストランでウェイターを呼ぶ時や、屋外のバーで従業員を呼ぶ時だけでなく、静かな飛行機内で近くに居る客室乗務員をすぐ呼ぶ時にも使える。この場合は小さく短く『プスィッ』って感じでやる。

『ねえ、ちょっと！すいません！』なんて声を出して声を掛けるより、短く『プスィィゥ！』の方が、一発で相手に届く確立が高いので、ブラジル人を相手にする時には使ってみて欲しい。

ただ、そんなに頻繁に用いられるようなものじゃなくて、一番耳にするのはバーやガヤガヤしたレストランが多いという感じのもの。そして田舎町の方が比較的多く使われてる気がする。だから、基本的には声が届くところにいる人を呼ぶなら、声を使って呼んで、雑踏にかき消されて声が届かず困ったときにプシ！って感じと覚えておくといい。

でも、こういうちょっと変わった文化っていうのは、覚えたらすぐ使ってみたくなるものだ。だからかな、実は現地人よりも観光客が使っていることの方が多い。ブラジルに行ったらジャンジャン使ってよ。減るもんじゃないし。

バーで酔っ払ってる時には、こういうのもアリ。連続プシ！

ちなみに、多摩動物公園のモウコノウマもこれで呼ぶとすぐ振り向く。『オウ！』とか『おーい！』とかだとあまり振り向かなくて、振り向いても面倒くさそうにのっそり振り向くんだけど、このプスィゥ！を使うとピクッってして素早く振り向く。そしてこっちに来る。

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