最近、耳が聞こえるとか聞こえないとかいう話を頻繁に耳にする。

僕も耳が聞こえなくなった事があるから、音楽家にとっての難聴がどういうものなのかについて書く。

ただ、僕が一時期なった難聴は片耳がほぼ聞こえなくなるというものだったから、音楽家にとっての難聴といっても片耳までの話。

僕が難聴になった時は、耳鳴り、ふさがっていく感じ、聞こえなくなる、という感じ。

全く聞こえないわけじゃなくて、わずかに聞こえていた。

ずっと聞こえないわけじゃなくて、2、3分だったり、何時間かだったりとまちまちで、それがほぼ毎日断続的に現れる。

医者に行ったわけじゃないから詳しい病名は知らないけど、後で自分で調べたところ、たぶん突発性難聴っぽい。

その時は何だかよく分からない症状で聴力が落ちてヤバイ！！！！と思いつつも、ちょっと疲れているだけで一時なものかなというように楽観的にもとらえていた。

たぶん、原因はストレスだったと思う。そのストレスがなくなってからは全く現れない。

全力で耳が聞こえる。

で、たぶん音楽から遠いところにいる人たちは「音楽やってる人が耳が聞こえなくなるのヤバイんじゃないの？」と漠然と思うかもしれないんだけど、僕が自分でなった体験からすると、特に深刻な問題でもなかった。

両耳が完全に聞こえないのはまずいと思うんだけど、片耳だけならもう片方の耳で音は聞こえるから特に問題ない。

ちょっと困るのは、音源の全体の配置をチェックする時に左右バランス悪く聞こえるから注意が必要というだけ。

でもそれも、片方の耳で聞こえている音を頼りに全体的に鳴っている音を想像できるから、致命的というほどのことはない。

こういう時のために「経験」があるんだから。

それも活かして普通に仕事していたよ。

だいたい、人間の耳は両方同じ聴力とは限らないし。利き腕、利き足、利き目があるように、聴力も左右で偏りがあると思うし、その日の体調によっても変化する。

本人は気づかないけど、耳垢がたまっていて聞こえ方が変わっていることもあるかもしれない。

両耳とも健康である時でも、機器の数字を目で頼りにしていたり、スタジオの状態や機材などを信頼した上で成り立っていたり、経験を活かしていたりするから、耳でその場で聞こえてきた音だけを頼りに対処しているわけではない。

耳だけで仕事するなんて無理。嫌でも他の感覚が働いてしまう。その音を知っているというだけで、既に経験を使っているわけだから。

だから片耳が聞こえなくなるというのは、聞こえなくなった耳が担当していた事を他の部分に割り振るというだけで、総合的には同じクオリティの仕事が出来る。

音楽家にとって片耳だけ難聴なら特に問題ない。

片耳の聴力が落ちた音楽家自身はすぐに「あれ？大した影響無いな」と気づくと思うんだけど、周囲の人間が過度に心配してしまうかもしれない。

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おまけ。

佐村河内守さんと新垣隆さんによるエア・ベートーベン詐欺のせいで、ベートーベンという名前を聞く回数が爆発的に増えた。

その際、「耳が聞こえなかった」ベートーベンっていう言われ方をよくされているけど、ベートーベンは骨導音で聴いていた説が有力だったと思う。

少なからず音を聴いて（感じて）作曲をしていたんだろう。

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