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アナと雪の女王にみる言語による違い

 
2014-07-31 12:52 Good(1) Comments(0)
in Movies - 映画, Languages - 言葉
「生れてはじめて」アナと雪の女王 - For The First Time In Forever - Frozen
「生れてはじめて」アナと雪の女王 - For The First Time In Forever - Frozen

Frozen / (c)Disney

多くの言語に翻訳されて公開されているディズニー映画『アナと雪の女王』の各言語バージョンを見ていくと、声の違いからキャラクターの性格が少し違うように見えたり、歌い方の違いから制作のスタンスの違いなどが見えてとても面白い。

そうそう、もうストーリーの感想は書かないよ。愛とは自己犠牲なり、ということ。

で、各言語の歌を聴いていて面白いと思ったのが、仕上げの方向性が少し違うところ。

例えば、日本語版は松たか子さんと神田沙也加さんが正確に丁寧に歌っていて、一曲の中で見ると会話と歌の部分がわりとはっきり分かれている。「ここは一瞬しゃべる所」、「ここは歌うところ」という感じで。

聞き取りづらくなるようなダミ声なんかも出さないようにして、会話も歌も聞き取りやすさを最優先にしているのがよく分かる。そういう意味でいろいろ丁寧に作っているのを感じる。



本家の英語版はというと、

エルサもアナも低いだみ声を使って、パワフルさやイタズラっぽさを出しているから躍動感がある。

言葉の聞き取りやすさは少し置いておき、リアリティのある躍動感を優先している感じ。

アナの「It’s true love!!」とか、エルサの「Come on!!」など。特にエルサはあの一言で本当に苦悩から解放されてこれから…というか既に楽しい生活が始まっている様子や、ありがちな「一歩引いた姉とおてんばな妹」という関係じゃなくて、幼少時代のように二人とも無邪気に対等に遊んでいた様子を強く感じさせてくれるから、最後に+αの気持ちさと楽しさを感じて終われる。

英語版でとても優れている点は、氷の宮殿でエルサとアナが歌う「For the first time in forever」の一番最後の部分、エルサが絶叫してアナの言葉を振り払うシーンの二人の声のミックスバランス。

エルサの絶叫を大きくしていってアナの歌が聞き取りにくくなるぐらいの音量バランスになるから、シーンとぴったり合っていて大迫力になる。

だけど、日本語版では絶叫の音量が小さくてアナの歌がはっきり聞き取れるバランスになっている。これ、日本語版だけじゃなくて、他の言語バージョンでもちらほら見られる。シーンの意味が音で表現されていなくて少しライトな迫力に落ち着いた感があった部分。けど、大抵は制作側からしか分からない制約などもあるから、別の意図があってのことなのかもしれない。

日本語版ではエルサはあくまでも「一歩引いた姉」のような性格のまま終わるんだけど、上にも書いたように英語版はわりといたずらっ子な面も出しているから、少し、本当に少しだけどキャラクターの性格が違うように見えてくる。

もっとも、「日本人目線」から見てのことだから、各言語圏のネイティブからみたらみんな「一歩引いた姉」だったりするのかも。このへんはその土地に住んで生活していないと分からないから、これ以上は推し量れない。



各言語の歌曲を聴いていると、歌い方が大きく違って面白い。その中でも僕が特に気に入っているのはスペイン語バージョン。

息遣いやメロディから外した歌い方がとても上手くて、仕上げの方向性としては『会話の延長線上に歌がある』というスタンスで制作されたことが強く伺える。



そもそもこの「アナと雪の女王」は会話シーンと歌シーンがはっきり分かれている部分が目立つから、こういうところに力を入れてスムーズにより訴えかける作りにしようとすることはとても大切だと思う。

会話と歌の繋がりを重要視しているから、そういう見方では僕の中では「リトルマーメイド」を越えられていない。





これとは対照的に、歌は歌で徹底的に歌い上げているのがイタリア語バージョン。

エルサもアナも美声で優雅に見事に歌い上げている。二人ともバイオリンのような揺れまくった歌声で世界観を作り上げていて圧巻。なんというか、さすがイタリア・・・・という感じ。





一方、こんなのもある。

マレーシア版なんだけど、これメロディラインが違うの。・・・・もう一回言うよ、メロディラインが違うの。

アナもエルサも違ってて、歌詞翻訳の際の字数による違いからメロディの音符が増減するならわかるんだけど、そうじゃなくて辿る音が意図的に変えられている感じ。



現場による歌い回しのアレンジがある程度認められているのは分かるので、あくまでその範疇での違いに過ぎないのか?

そもそも、本家の英語版の方が既に譜面とは違う独自の歌い回しで表現しているのか?

他の言語バージョンでもこのマレーシアと同じ「違うメロディ」を歌っているものがあったので、そもそも第二案として「仮に歌えなかった場合」のメロディのバリエーションを用意されているのか?

まさかとは思うけど、、、、声優がメロディを間違えてしかも録音現場で誰も気づかなくて最終チェックの人間まで気づかなくてそのまま世に出てしまったのか・・・・まさかね(笑。

いずれにしても、ディズニー映画では国ごとの現場の裁量権がかなり認められているであろうことは伺える。現場は楽しそうだ。

どこが違うかって?日本語版と英語版のどちらかでも何度か聴いている人なら一発で分かると思うから探してみてよ。特にエルサの歌の方。





もう一つ変わったのといえば、タイ語バージョン。

日本語歌詞で『なんかへんなきもちね~♪』の部分のメロディラインが裏裏で取っているのを、表に変えている。オケの演奏が遅れ気味で(音の立ち上がりが遅いからそう聞こえる)それに合わせてるから崩壊してるわけじゃないんだけど、日本語版や英語版で聴き馴染んでいると「あれ?」って思う。

他の言語バージョンでは、オケより走りぎみに歌って丁度よくなってるんだけど、タイ語バージョンではオケより遅れて歌ってるからこういうことになってる。

でも、その直前にも同じ音形が出てくるから分かってないってことはないはずだから、あえてアレンジしているのだと思う。かなりのチャレンジだと思うよ。

そしてこんなアレンジまで許されるっていうのも凄い。日本語版ももっと遊んでも良かったんじゃないかな?





最後に、こういう普段の会話と織り交ぜたアレンジが多く施される歌曲でよく見られる「曖昧な音」というのが面白い。ミュージカルだけでなく勿論ポップスでもあるよ。

日本語版の歌詞で『開くのだ門を・・・・今』の部分のメロディライン。

このメロディラインは元は譜面に楽音として音符は記載されているんだろうけど、最終的に発音する段階では『音を外していいから地鳴りのように下から沸きあがっていく事を優先させて』というディレクションの下にレコーディングされていると思う。

譜面の段階では音符で、歌い方としてはニョロニョロ線で、という感じ。

「生れてはじめて」アナと雪の女王 - For The First Time In Forever - Frozen
「生れてはじめて」アナと雪の女王 - For The First Time In Forever - Frozen

だからどの言語のバージョンを聴いても『開く』の最初の2音は音を大きく外している歌が多い。

ただマレーシア版については、もう出だしの音が全く違うのでこれには該当しない。

で、ここの歌い方で一番好きなのがブラジルポルトガル語バージョン。怯えからの振るえ、奮い立たせる力み、同時に対外的に見せなければいけない新女王としての威厳などなど、こういった心情がよく表現されている。

けっこう綺麗な声のまま歌おうとしているバージョンが多いという印象だけど、ブラジル版はかなりよく叫べている。



その言語圏で伝わりやすいように、受け入れられやすいように、ということで制作していくからこそこういったお国柄とか気質なんてものが表れてくる。

各言語によるしゃべり方と歌い方の違いで、キャラクターの雰囲気などが変わってくるところを見るというのもとても面白いよ。おすすめ。



翻訳って難しい



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おまけ。

ノルウェー版は、なんだろ、、、、ちょっと聴かない方がいいかもしれない。

「開くのだ門を、今」の部分の「今」にあたる音のところの歌詞が『Beslag』という単語で、『ベシュラー!』って発音してるんだろうけど、僕の耳ではどうにも『ブッシャー!』に聞こえてしまって、、、、そう、ふなっしーを思い出しちゃうんだよ。笑ってしまう。

それでもあえて聴きたい人は、『for the first time in forever norwegian』なんかで検索してみてよ。


そしてタイ語バージョンでは、『プラトゥーン!』って空耳してしまう。天を仰ぐあの名シーンが同時再生されてしまうよ。


おまけ2。

インターネット上でお遊びの隠し要素をいくつか見た。隠しミッキーとかラプンツェルとか。

でも、リトルマーメイドの沈没船だけはやめて欲しい。

いろいろ話を繋げて盛り上がりたい気持ちは分かるけど。

だって、リトルマーメイド、死ぬまでに1000回は見る予定で、あと900回ぐらいは残ってるのに、見るたびに悲しくなるのは嫌だ。


おまけ3。

「生れてはじめて」の「アレンデールが危・機・な・の・よ~」のところって、日本語版でもかなり無理がある訳になってると感じたんだけど、他の言語バージョンを見ても同様にとても苦労した様子が伺えて面白い。

「き・き・な・の・よ~」が、他の言語だと「ニェー・ヴェス・ペオー・ペオー・ペオー~」とか、「センプリ・センプリ・センプリ・センプリ・ディピョ~」とか、「フィジー・フィジー・フィジー・オデュ・ト~」とか、なんとしてでも横に開く口の動きに合わせようとがんばっている。

マレーシア版は合わせる気がなさそうなのも笑えるところ。

いろいろ面白い。


おまけ4。

クラシックギター1本による「雪だるまつくろう」の演奏動画。



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