ナミアゲハが前蛹（ぜんよう）になる際、帯糸くぐりに失敗して落下してしまうケースがたまにある。先日までやっていた二回目の観察の時にも15匹ほどいる幼虫の中で、壁から落ちてそのまま前蛹になってしまう個体がいた。

落ちた前蛹または蛹はそれで死亡ではなく、ちょっと手を加えるだけで簡単に羽化まで成長を見守ることができる。落ちたままでも無事に羽化できるかもしれないけど、できるだけ羽化する確率を上げるために、本来の正常である状態に近づける方が良い。

うちでは、落下した前蛹をこんなふうに処置したら上手くいった。

帯糸を作るところで失敗して落下した。

そっと拾い上げてティッシュの上に寝かせておく。

こうやって何もせずに置いておくだけで、自分の力だけで蛹になる。ただ、脱皮する際、お尻の皮が取れない場合は、爪楊枝で皮を押さえれば、蛹が体を振って皮を取る事が出来る。放っておいて皮がお尻についたまま蛹になっても問題ない。

蛹の皮が硬く安定するまで4,5日を目安に、引き続きティッシュの上で寝かせておく。蛹がどういう向きになっていても大丈夫。

ナミアゲハが安全に羽化できるためと、観察しやすくするために、割り箸に蛹を固定する。

完成形はこんな感じ。

手順としては、まず本やダンボールなど土台となる物を用意し、その上に短く切った割り箸を2本平行に並べてセロテープで固定する。その割り箸の間に蛹を置く。こうすると複雑な形をした蛹を綺麗に作業しやすいように安定させられる。

支柱にする割り箸に木工ボンドを極少量着ける。

支柱を洗濯バサミで固定して微調整がきくようにする。蛹のお尻の先端を木工ボンドに当てて接着する。

※浸透するタイプや表面を溶かすタイプの接着剤は厳禁！！アロンアルファやセメダインなどＮＧ。

※木工ボンドが蛹のお腹やわき腹に着かないように十分注意する。お尻の先端部分だけを接着する。

1時間から2時間ほどすると木工ボンドが乾いて接着が完了する。洗濯バサミで挟んで立てても蛹は落ちない。

裁縫糸で帯糸を作る。

通常の蛹の状態を参考に、出来るだけ同じような状態にする。

注意点は、蛹のお腹側が割り箸に密着しないように2,3mm程度の隙間を空ける。この遊びが無いと、羽化する時に胸の部分が開かずに羽化不全になってしまうかもしれない。

※蛹のお腹側と支柱の割り箸の間は2,3mm空ける。

背中から見るとこんな感じ。蛹のクビレに裁縫糸がひっかかるようにする。

糸の結び目は木工ボンドでくっつけて上下にずれないように補強する。

ここまで出来たら、洗濯バサミで固定して一旦置いておく。

続いて、成虫が羽化した時に捉まるための足場を作る。

割り箸に木工ボンドを着ける。少し多めに着ける。割り箸は割らない。

先に作った支柱に、足場の割り箸を挟むように接着する。木工ボンドが乾くまで何かに固定して置いておく。

足場の設置のポイントは、蛹の頭から1cm程度の空間ができるように割り箸を固定する。

※蛹の頭頂部と足場の割り箸の間は1cm空ける。

木工ボンドが乾いて透明になったら、ほぼ完成。

裁縫糸の余分なところを切る。

完成形、真横から。

羽化までは、こうやって洗濯バサミで挟んで立てておくと楽。

補足

支柱と足場の割り箸の角度は直角じゃなくて、ちょっと開き気味にすると観察しやすい。蝶にとっては十分な隙間さえちゃんとあれば直角でも羽化のし易さに変わりはないだろう。

1cm程度の隙間を空けるのは、こんなふうに出てくるため。体が上に出るぶんの隙間が必要。

足場の割り箸は割った後の細い一本のものより、二本が適度な間隔で並んでいる方が6本の足を全部使ってしっかりと捉まりやすい。足場の棒が細すぎると全部の足を使って捉まれない場合がある。

羽化する時には、足場の割り箸がほぼ水平になるように傾けるため、こんな感じで洗濯バサミに支柱を挟んで、その洗濯バサミをぶ厚い本で押さえると倒れずに観察し易い。

このように、前蛹や蛹は壁から落下してもそれで終わりじゃないから、慌てずに工作して欲しい。

そうするとこうやって無事に羽化できる。

ナミアゲハを飼育していて、もし前蛹や蛹が落下してしまったらこの落下したナミアゲハの蛹の救出方法を参考にしてみて欲しい。これだと観察をしやすくてオススメ。

ナミアゲハの観察2のまとめ

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