大抵のヴィオロニスタは演奏による右手の爪の磨耗を防ぐために、よく女性がネイルケアに使うベースコートという塗料を爪に塗っている。

僕も塗っていて、いつも愛用しているベースコートがこれ。デュカート(Ducato)のベースコート。繊維入りで欠けにくく爪から剥がれにくい。

これを何重にも重ね塗りして固めていた。

ヴィオロン（クラシックギター）を弾く時の爪の保護として使うベースコートは、このようにファイバーインベースコートなどと銘打っている繊維入りのものが良い。そうでないものは時々、鋭角に欠けてそこに弦が引っかかって演奏できなくなる。

街のドラッグストアで手に入るベースコートをある限り全部試した。その中でこれが一番良かった。

ただ、今は使ってない。他の製品に変えた訳じゃなくて、塗らなくなったから。それもつい最近のこと。だから正確には、塗っていたになる。

最近は自分のプレイスタイルが大きく変わってきている。出したい音のイメージが変わってきているから、その為に必要な曲のアレンジ、弾き方、爪にしている。

偶然にもそうした時期にストックしてあったベースコートが丁度底を突いた。新しいのを買いに行ったら、売り切れ。これはもう、『お前の演奏にベースコートは必要ない』という神のお告げだ。

そんなお告げが聞こえた訳じゃないけど、ただなんとなく漠然と『いろいろ良い転換期なのかも…』とは感じた。

だから、そのまま塗らないことにした。

今はベースコートを塗らないで、そのままの爪でヴィオロンを演奏している。

『でも、爪の磨耗はどう対処してるの？』という疑問を持つだろう。

それが、僕自身びっくりしている。先日新しく買った弦、AUGUSTINE BLUE（オーガスチンの青）がベースコートを塗らない爪でも上手くフィットする。僕の弱い爪でも当たり負けしないで楽に弾ける。

爪の質は人それぞれだし演奏スタイルも違う。だから皆が皆こういう感触を持つとは限らない。ただ僕には丁度良かった。

それまでのベースコートを塗ってヴィオロンを演奏していた事が、まるで大リーグボール養成ギブスを付けて練習している星飛雄馬みたいなイメージになった。

それほどの変化。

とても楽。

ヴィオロンの演奏スタイルが変わった、弦が変わった、ベースコートが売り切れ、、、こんな風に偶然が3つも重なったら、もう神のお告げだと思って流される方へ流されるよ。

何年か分からないけど、長い間このデュカートのベースコートにはとても助けられた。オブリガード！

ところで、ベースコートを使っているのはヴィオロニスタの他に、他の楽器奏者でもいるかもしれないけど、野球選手、ピッチャーも使っていると聞いたことがある。こういうネイル関連の製品を作っている企業は、オシャレ用だけじゃなく、僕みたいな演奏者に役立つ強力なものも開発して欲しい。

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最後に、ドラッグストアでこのベースコートを買うとき、よくレジの女の人が僕の爪をこっそりジィィィっと凝視してくる。勘定しながら自分の手元を見ているふりして僕の爪を見ているのが、目は見えなくても目蓋がはっきり動いてるからよく分かるんだ(笑)。

男の人はあまり見ない。『良く分かんないけど、塗る人なんだぁ・・・』ぐらいにしか思ってないのかもしれない。

ジィィィっと見るほど気になってるなら『変わった爪だね。何かやってるの？』とか何とか自然に話しかけて欲しい。ちょこっとでも会話した方がお互い気持ち良いと思うよ！

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