ドゥルヴァル・フェヘイラ Durval Ferreira。彼はリオ・デ・ジャネイロでJ CLUBっていうショーレストランを進行していた。僕が住んでいた街から2区域北隣のフラメンゴ地区にある。僕はよくそこに遊びに行っていて、そのうちに知り合った。

J CLUBはこんなお店。とてもおしゃれ（今は内装変わってるかもしれない）。写真の店内はまだ準備中なので誰も居ないけど（枠外に打ち合わせ中のミュージシャンやら店員は居る）、営業中は薄暗くなりよほど内々のショーでも無い限りはお客さんでいっぱいになる。

彼は様々なミュージシャンのショーを進行しながら、たまにショーの最後の方で自分もステージに上がって演奏することがあった。当時彼のことをよく知らなかった僕はそんな彼のことを、ショーを進行しながらたまに自分でも演奏する音楽好きなおっさんだと思っていた。

ドゥルヴァルと初めて会ったのは、初めてJ CLUBへ遊びに行った日。本当は予約しないと入れないんだけど、運良く入れてもらえた。満席だったから後ろのバーカウンターでならということで。店内のステージから一番遠いカウンター席で僕が一人でビールを飲んでいた時のこと、すぐ横で僕に背を向ける形で彼がお客さん等と立ち話を始めた。気分良く手振り身振り体全体で話していた。そのうち徐々にこちら側に近寄ってきていることに気付いた。たぶん後ろに僕が居ることに気付いてない。手がぶつかりそうかな、、、と思ったら、彼の上着の裾が僕のビールをひっかけた。

ビールはこぼれて空っぽ。ちょっとした事故だが、普通の神経なら謝るものだ。しかし彼は『おぉぅ、とんだ災難だなこれ！あっはっはー！』って声が聞こえてきそうな感じで笑顔で両腕を広げ立っている(笑)。この時の彼を見て僕は『すげーなこのおっさん！』と思った。だって僕だったら謝っちゃうから。しかし流石にブラジル人から見てもちょっと待てと言いたくなる状況。カウンター越しに居たマスターがとても困った顔でこれはマズイよあなたがやらかしたんだからとか何とか言いにくそうに言っていた。ドゥルヴァルはすぐに近寄ってきて小声でごめんとか何とか言ってきたと思うが、彼の突然の登場が衝撃的すぎてよく覚えていない(笑)。

何故だか、全く腹が立たなかった。いいよ気にしないで等と少し会話してその場は終わり。その後も何度も遊びに行っているうちにロベルト・メネスカル（相変わらず元気らしい）やマルコス・ヴァーリなどなどいろんな人に会ったし、故ルイス・ボンファが生前愛用していたヴィオロンを演奏することが出来たりといろいろな事につながっていった。

そんな中、このJ CLUBで故ルイス・ボンファの追悼イベントが行われ、僕も演奏した。これはこれでとても楽しかったのだが置いておき、後日驚いたことが起きた。いつもの通り遊びに来ていたら、不意に女性が声を掛けてきた。追悼イベントの時に僕が演奏している所を写真に撮ってくれていたらしい。写真を渡したいから家まで来てくれとのこと。『・・・ってか貴女誰!?』である。

彼女はドゥルヴァルの妻だった。ニウジ・フェヘイラという女性。教養あるが少々配線間違えぎみな天然気（奔放かな）が感じられた。躍動感あって気持ちが良くて魅力的な女性だった。後日電話して待ち合わせ、家に行った。日時、家の場所、間違いは無い。なのに彼女が居ない!!仕様が無いので、結局彼女を抜いたドゥルヴァルとおばあちゃんと愛犬と共に井戸端会議(笑)。短い間だったけど割と話もできたし写真も貰えたし、とても楽しい時間だった。こんな感じで写真を撮ってコンタクトしてきてくれた人は初めてだったからとても嬉しかった。だからその時の写真をプロフィールに使っている。愉快な人でしょう？彼女(笑)。

ドゥルヴァルは演奏している時もそうだが、音楽の話をしている時もとても高揚感ある表情になる。『演奏を出来る場所を進行しながら自分でも演奏をして楽しんでる彼は最高だ!』って思った。今でもそう思っている。彼は既に亡くなったが僕の中では変わらず生き続けている。話をする、話を聞く、その人の事を共有することは弔いにもなる。

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